夜間頻尿とは?
夜間頻尿(nocturia)とは「夜間排尿のために1回以上起きなければならないという訴えである」と定義されます。夜間頻尿は多くの高齢者を悩ませる代表的な下部尿路症状で、加齢とともに増加し、生活の質(QOL)の低下に強く関与しています。夜間頻尿は「本人または介護者が治療を希望している」ことが必要で、患者さんご本人の生活の障害になっていない状況では、医療上の問題にはなりません。通常2回未満は正常と見なされます。
夜間頻尿の原因はなんですか?
1)多尿、夜間多尿
1日(24時間)の尿量が40ml/kg(例えば60キロの方だと2400ml)以上だと多尿と診断します。また、多尿でなくても夜間の尿量が多くなって、一日の尿量の33%(若年者では20%)以上ある場合を夜間多尿といいます。多尿の主な原因は糖尿病、尿崩症、水分摂取過剰などがあります。夜間多尿の主な原因は加齢、水分過剰摂取、薬剤性多尿、高血圧に伴う夜間多尿などがあります。
2)膀胱畜尿障害
前立腺肥大症、過活動膀胱、間質性膀胱炎などがあると、膀胱にためられる尿の量が少なくなり、夜間頻尿になることがあります。
3)睡眠障害
近年、夜間頻尿と睡眠障害の関係が問題となっています。夜間頻尿に及ぼす睡眠障害には、不眠症(身体疾患、薬物、心理的、環境的要因)、うつ病、睡眠時無呼吸症候群(SAS)、などがあります。
夜間頻尿の診断はどのようにしますか?
問診、尿検査、排尿日誌(クリックするとPDFが開きます)、超音波検査、尿流量検査、などを行い、夜間頻尿の原因を調べます。
夜間頻尿の治療はどのようにしますか?
夜間頻尿の原因は決して単一のものではなく、機能的膀胱容量の低下に加え、個々の症例により夜間多尿、加齢、睡眠障害などの様々な要因が関連していることに留意しながら治療を行うことが重要です。
1)多尿、夜間多尿に対して
・飲水に関する指導
夜間の飲水過多、アルコール、カフェインをできるだけ避けるようにします。特に飲水過多に関しては、飲水のバランスを調節することが重要です。
・運動療法
夕方から夜間にかけての運動(散歩など)は、下半身にたまった水分を運動によるポンプ作用で血管内に戻し、また汗として余った水分を対外に排出する作用のため有効とされています。
・薬物療法
利尿薬、抗利尿ホルモンなどを使用して、尿量を調節します。水中毒などの副作用もあり、十分に注意して用いる必要があります。
2)膀胱畜尿障害に対して
・過活動膀胱に伴う夜間頻尿に対しては、抗コリン薬などの過活動膀胱治療薬を用いて治療します。口渇や便秘などの副作用に注意しながら使用します。
・前立腺肥大症に伴う夜間頻尿に対しては、薬物治療を中心に行います。ただし、夜間頻尿の原因は決して単一のものではなく、機能的膀胱容量の低下に加え、個々の症例により夜間多尿、加齢、睡眠障害などの様々な要因が関連していることに留意しながら、前立腺肥大症の治療を行っていきます。
3)睡眠障害に対して
・不眠の原因となるような身体疾患や精神疾患がある場合には、まずそれらの基礎疾患の治療を行います。睡眠環境や生活習慣の改善も重要です。睡眠障害を原因とした夜間頻尿に対しては、睡眠薬の使用も考慮します。